大判例

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東京高等裁判所 昭和50年(行ケ)90号 判決

一 成立に争いのない甲第二号証(本件考案の公報)および甲第三号証(引用先願の公報)によれば、先願と本件考案とがいずれも考案の対象が天蓋付きキヤツプシユールという点において一致し、更にキヤツプシユールを廉価に、かつ多量に製造するという技術課題および側縁部と一体となつて折ひだ部(ギヤザ)を作つて天蓋を形成するという構成において一致しているが、引用先願が薄素材の所要部に接着剤を施すことをその構成の一部としているのに対し、本件考案がギヤザの接着に凸凹微細の突起を押刻し、所要のマークを印字することをその構成の一部としていることが明らかである。したがつて、引用先願と本件考案とは、その構成を異にしていると考えられる。

そこで、原告主張の審決取消事由について判断する。

(一) 原告は、右構成の差異は附随的な事項に関するものであつて、両者の技術思想を異ならしめるものではない旨主張する。ところで前記甲第三号証によれば引用先願の公報の考案の詳細な説明には、「薄素材1の全面に接着材を施し、……上部周辺5を折目仮線Cより、内側中心部に向つて、放射線状の折ひだ部6を形成して、ほとんど直角に、角部に傾斜面取7を作つて折り曲げて、天蓋8を一体に、機械的にプレス成形固定する。」(左欄下から一三行目ないし下から五行目)、「折ひだ部6の重合接着によつて、天蓋8はもちろん、全体的に強度大なるキヤツプシユールを、廉価に供給することが可能である。」(右欄一三行目ないし一六行目)と記載されていることが認められるから、引用先願における薄素材の所要部に接着剤を施すという構成は、折ひだ部(ギヤザ)を接着固定する作用効果を有するものであるということができる。また前記甲第二号証によれば、本件考案の公報の考案の詳細な説明には、「ギヤザの上下両面より凸凹微細の突起刻印5を押刻してギヤザを安定接着すると同時に所要のマーク6をも接着印字して表示することができる」(右欄八行目ないし一一行目)と記載されていることが認められるから、本件考案における凸凹微細の突起を押刻し所要のマークを印字するという構成のうち、凸凹微細の突起を押刻するという構成が、少くともギヤザを接着固定する作用効果を有するものであることは明らかである。しかも前記甲第三、第二号証によれば、引用先願と本件考案の各公報の考案の詳細な説明には、折ひだ部(ギヤザ)の接着が省略可能である旨の記載はない。してみると、両考案とも、天蓋の折ひだ部(ギヤザ)の安定接着をも課題としており、その解決手段として、先願においては薄素材の所要部に接着剤を施し、本件考案においては凸凹微細の突起を押刻するという構成をとつたということができる。そして、上記の各構成は、それぞれ考案の構成に欠くことのできない事項のみを記載すべき実用新案登録請求の範囲に記載されていることも、同甲第三、第二号証によつて明らかである。したがつて、前記構成の差違をもつて附随的事項に関するにすぎないとする原告の上記主張は採用できない。

(二) 原告は、また、引用先願と本件考案の構成の差異は、ギヤザの接着方法に関する単なる均等手段の転換であると主張する。

しかしながら、均等手段の転換という理由で二考案における接着方法が実質的に同一であるとするには、その構成の差異が公知手段の置き代えに相当する差異のみであつて、しかもそれらの手段が両考案にとつて同一機能を果し、その置き代えによつて考案の作用、効果に格別の差異が生じない場合であることを要すると解すべきところ、本件において、薄金属板または箔で形成されたギヤザを接着する手段として、接着剤を施す代りに、ギヤザの上下両面から凸凹微細の突起を押刻することが公知手段であつたと認めるに足りる証拠がない。したがつて、この点に関する上記原告の主張も採用できない。

二 以上の次第で、本件審決には原告の主張するような違法はないから、本訴請求を失当として棄却する。

〔編註〕 本願考案の要旨は左のとおりである。

非鉄金属の薄板または箔をもつて作つた胴体1の上方折りまげ線3を按配して天蓋とすべく重ね折込みギヤザ4を作り、このギヤザの上下両面より凸凹微細の突起刻印5を押刻接着すると同時に所要のマーク6を印字した天付きギヤザ折込式キヤツプシユール

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